晶析装置の適用例—硫安浴からの芒硝の分離
晶析操作は、固形物としての製品を生成することのほか、主要な目的として、溶液中に溶存している不純物を析出させることによって溶液を回収(同時に結晶も回収される)することが挙げられます。なお、廃液の減容化を目的とした濃縮晶析分離操作も、溶液は回収されないが、この範疇にあたります。このように結晶製品が目的でなくても、晶析の基本を踏まえた設計が重要であることは論を待ちません。
ここで紹介する例は、ある製造工程の硫安浴に水と硫酸ナトリウム(芒硝)分が増加して、使用できなくなった液が窒素規制により放流できないため、硫安液を回収したケースです。
相平衡関係
硫安-芒硝-水の三成分系の溶解度線図で見る限り、30℃以下の低温域では、固相(安定な結晶系)は含水芒硝、硫安、及び芒硝と硫安の複塩が存在します。
本例は、含水芒硝が析出する領域で晶析操作することが目的ですので、右図に記入した操作線のようにまず冷却晶析により、含水芒硝を結晶として分離し、分離ろ液を濃縮するプロセスが考えられます。
晶析工程フローシート
本例の晶析工程の概略フローシートが下図です。
硫安濃度が低く、芒硝濃度が高くなった供給原液は、分離ろ液で予冷された後、前頁で紹介した外部冷却掻取式結晶缶へ送られて、ブラインによって所定温度まで冷却され、連続式の遠心分離機へ送られます。
分離機への送液はエアーリフトによって行なわれております。分離ろ液は原液と熱交換した後に濃縮器へ送られ、所定の硫安濃度まで濃縮して回収されます。
分離された結晶は、ほとんど硫安は含んでおらず、回収も可能ですが、量が少ないため溶解して廃水処理装置へ送られています。
装置の外観写真
右の写真は、2槽直列の晶析工程で、連続式遠心分離機、ろ液槽、溶解槽及びポンプ類が組み込まれてスキッドで納入されたものです。
槽の寸法、数量はスキッドで陸上輸送が可能であることを考慮して決められております。
こうした直接的な生産設備でない設備は、設備費及びランニングコストが安価であると共に、24時間無人で運転できることが要求されます。
こうした点からも晶析プロセスに関しては経験豊富な当社にご相談下さい。